故増山氏の遺作となった「翔べ! 470」*1に記載された内容を理解し実践している人は未だそれ程多くないと思う。二次試験物理8割(自慢)の学生引退セーラーが理論からどのように実践に繋げたか、軽く述べてみようと思う。
ヨットはボートスピードで勝敗が決するといっていいほど、ボートスピードが大きな勝因になる風域が多い。ではそのボートスピードをいかにして出すのか。人間は場合分けした方が理解しやすい生き物なので、風域を大雑把に分けてそれぞれで解説していく。
・オーバーパワーのクローズ
真っ先に磨きたい風域だが焦らず三段階ぐらいでレベルアップしよう。
一段階:ヒールキープ・メイントリム量少なめ。テルテールを常に流す意識でメイントリムの量は少なくなるように心掛けよう。常にヒールを一定にする気持ちが大切だ。チームで一番下で走ってもリーフェイして離れていかなくなれば、次の段階に移行しよう。
二段階:ブローでベアしてメインを出し、加速したタイミングで素早くメインを引き込みながらラフすることを基本とする。ラルでは逆にメインを少し詰めてスピードが落ち始めたらそれに合わせてベアしながらメインを出す。ブローはないけどスピードがなくなったら、メインをパンピング気味に引き込んでフルハイク・フルトラピーズでベアすればセミプレーニングしやすい(パンピングベアと呼ぶ)。スピードを維持できるようになったらセンターを上げられる。センターを上げたらウェザーが減る。スピードがなくなるとリーフェイするので、センターを上げたらもう後はスピードを切らさないことに専念する。また20度までのヒールならば許容できる。艇はヒールした方が復元モーメントを稼げるしよりメインが引けている。基本的にヒール0~10度ぐらいで走り、スピードがなくなればパンピングベアして20度ぐらいまでのヒールを許容しつつスピードを出すイメージ。20度までならヒールはメインを出さずにボディロッキングで起こした方が良い。6ノット以下のスピードになれば相対風向・センター有効面積・ヘルム・ヒール、すべてが破綻する。
三段階:スピードがある状態で少し角度を稼ぐ気持ちを持つ。スピードが切れる前に必ずベアする。これとは別にピンチングとドライブの使い分けをできるようになり、スタート・マーク際でクローズの有利なポジションを得る方法を手に入れること。
・ジャスト付近クローズ
基本的にメインは出さないこと。出さずに反対デッキが海面に近づくぐらいまではヒールを許容し、ボディアクションで起こした方がいい。クルーヘルムスで同時にロックすれば上れる。したがって8ノットまではきっちり起こせるように体重をつけよう。オスカー旗が上がればボディロッキングとパンピングベアをすればいい。スピードがなくなればパンピングベア。ロメオポジティブなら単にベア。
・アンダークローズ
当たり前だが船を揺らさないことと水線長を沈めるように前乗り(470のナックル上側が沈むところまで)。キープフラット・ニュートラルヘルムが理想。そのようにチューニングとヒールトリムをしよう。スピードがなくなればメインを若干緩めてベアしよう。
・中デッキクローズ
メインを流す事と角度に注力。スピードがなくなればオーバーヒールをつけてセールシェイプを保ち、起こしながらワンロック入れよう。フラット意識だがスピードがなくなりやパワーが切れがちなので(艇のエネルギーが小さくなるので)、オーバーヒールがほかの風域よりも多くなりがちである。メインはツイストさせよう。
・ロメオ下ランニング
ラフベアは必ずヒールをつけてロックを入れるキネティクスをしよう。吹かれた事はない。過度にすると目を付けられる。波・ブローでもキネティクスをガンガン入れよう。マストトップにアングルマーキングをつけ、波のないコンディションならばトップの風見130~140度(相対風向)まで上る。
・オスカー下ランニング
トップ風見150度まで上れ。波が来たらオーバーヒールになるので、アンヒールまで起こしてパンピングベアすればサーフィングできる。基本上ってスピードがある状態を維持し、波で一気に角度を稼ぐイメージでいけばいい。これができれば20位以下は取らなくなる。西宮の汚い波は全て突っ切った方が早いので突っ切れるまで上った方が良い。逆に綺麗な波の海面では一つ一つ丁寧にサーフィングしていった方が良い。
スピンパンピングのコツは風の塊を持ってくる感じだ。上下同じくらい引いてパンピングの抗力を正面方向に出す事。パンピングの引き具合が運動視差にそのまま化ける具合だと最高だ。
・オスカー下リーチング
ラフすればオーバーヒールと共にスピードが手に入る。ラフしてプレーニングをするならばラフベアを繰り返しながら合わせてメイントリム。大事なのはラフ後ヒールが大きく入る前にベアすること。メインを見て合わせるのではなく、当て推量で引き具合を調整すること。ティラーとメインを必ず同時に動かすことだ。それによって常にプレーニングをキープする。クルーもそれを理解してスピントリム、ベアの時に出してラフの時に引く。ブローでは即ベア、メイン出し、スピン出し→スピードUPと共に両方シートを引き込む。プレーニングに入らないならクルーは前へいき、ラフかブローでプレーニングできるなら後ろにいく。
・ロメオ下リーチング
ティラーは極力使わず静かにスピードをつける事を意識する。トラベラーをがん引きしてツイストさせ、ジヴ・スピンの裏風を活用する。メインはシバーする手前まで引き込み、分からなくなれば風見に平行まで出す(風見平行はたいていちょっとシバーするぐらい)。ジヴもスロットルを意識して出す。キープフラット、ヘルムはセンターで調節が理想的である。スピンのリーが強すぎるならオーバーヒールをつけよう。
・タック:ティラーの突き始めから終わりまでをくらいの速さで。最初は遅く、後になるにつれて早くが理想。当然ラフ中はメインを引き込み、タック中はベアを急ぐ。
・ジャイブ:ロメオ下ぐらいの風なら煽りましょう。ブームが返ったらすぐスピンポールを入れ替えられるようにヘルムスはスピンシートを持ちましょう。まだできてないよね阪大。ジャイブを打ちたくなるくらいまで動作練習しよう。
練習で磨くのはスピード感覚だ。今早いのか遅いのか常にクルーヘルムスで言い合った方が練習効率は上がる。
(また多分更新します)